建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



人間の価値
やさしさの時代、だそうである。
人にやさしく、環境にやさしく、地球にやさしくとやさしさの大安売りという感がある。
やさしさは女性の専売特許であった。特に母の愛はその代表であろう。
私は姉五人と母と祖母に育てられた。
物心ついたころからまわりは女物のにおいであふれ、遊びも、言葉も、趣向までも影響をうけた。
はじめて札幌に出た時、二番目の姉は「女はみんな狼だから、気をつけろ」という手紙をよこしたほどだった。
それほど女性達に守られて育った私は、女性のやさしさの裏にある、ほんとうの強さを理解できた。
自分が無く気の弱さから、いいかげんさをやさしさと勘違いしてしまっている社会。
子供達のいじめの問題や憂うつな事件がつづく。
けっきょく汚職や耐震偽装などなど、自分のことしか考えない無責任な社会の大人達の写しなのだ。
人間の価値が、一流大学に入って一流会社や官庁の幹部になるとか、地位が高いとかいうことで計られるものではなく、生きていることに感謝する心や、他を思いやる心が一番大切なのであって、
ほんとうのやさしさとは人間の価値を計る基準の中で、もっとも位の高いものなのだと思う。




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