建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



信じる者
先日ある人から独立したいという相談をうけた。
設計の仕事は、紙とエンピツと、頭ひとつで独立できるから、ある程度力を つけると独立を考えてしまう職業なのだ。
簡単に独立できるから、失敗するのも多いのだけれど、しかしあれこれ 考えて、人生の転機を感じたら、一種の思い込みのまま勢いにのって 一気に やらなければ、できるものではない。
だからといって早すぎると青虫のまま脱皮できないで終わってしまうし、 ぐづぐづ していたら蝶になる可能性を摘んでしまう。
自分を生かしてくれる会社がそうあるものではないから。
独立したいという人に、 やめとけとも言えない、なかなかアドバイスが むずかしい ものだ。
自分もそうだったが、会社の名前とか、地位を失ったとき、その人の真価が 試されるわけで、それが人間性であったりする。
けっして知識や情報だけでは仕事などつづけられるものでないことに 気づく のである。
土を耕して種をまき、水をやる、結果が出るまで時間がかかるが、それができる か。
あとは信じ合える人と出会い、その人達のために仕事をすること。
「信じる者」と書いて儲かると読むではないか、それが世の中だと思う。




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