建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



棟梁との出会い
修学旅行で初めて見た京都や奈良は、頭や心のやわらかい少年時代の私にとって夢のようなあこがれになった。
仏像や、寺々の屋根のやわらかい線、そのたたずまいはなぜかふるさとに帰って来たようななつかしい感じを受けた。
それはどこからくる思いだったのか。
あれから三十年、私は建築の道を歩んでいる。そして運命のように、京都や奈良の茶席や数奇屋に学んだ。その後この道を確信したのは、薬師寺西塔を再建した西岡常一棟梁との出会いだった。
塔組をいかに末永く、一千年という歳月に耐えさせるか、木の心を知り、そのいのちを自分のいのちとして、ヒノキの部材に補強の為のいかなる近代的工法も拒否して再建にのぞんだ姿、その思いを一冊の本で知り感動して会いに行ったのだった。
秋も深まった薬師寺の境内、初めて西岡氏にお会いした時の厳しく、そして温かい言葉がきのうのことのように心にひびいてくる。
あなたが今造っているものが五十年たつとその町の文化になる、そういうものを造らなければいけない、本物の素材をうまく生かせば美しいものは造れる。美しいものはかならず残ります。あなたは設計をやっているというが、図面だけで物を造るのではなく、職人さんと一緒になって、建築にいのちをふきこまなければいけない。
そういう責任感をもって建築をやらなければならない・・・と。




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