建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



一生青春
「青春とは、ある時期を言うのではなく、心の様相を言うのだ・・・・・・」
何のために生きていくのか、多感な二十代に、私は自分の描く理想の生き方を捜し求めていた。
松下幸之助氏を師と仰いで、全ての著書を読みあさった。
大阪まで師を尋ねたとき、会社のロビーの吹き抜けに、高さ二十メートルはあろうか、青銅の大きな板に刻み込まれた、青春とはの一節、その荘厳な大きさに度肝をぬかれた。
三十近くなって、やっと建築という世界と出会い、飛び込んでいった。
建築をやるなら木を知りなさい、茶室建築を多く手がけていた藤田辰雄社長に教えられ、弟子入りした私は、木の魅力と、その偉大さと、そしてそこに秘められた木の本質を学んだ。
木は切られてなお、その倍数の命を生きる。
木の魅力は美しい年輪とともに、何百年も生きぬこうとする、そのエネルギーにある。
現代人はその意味と、先人の創り上げてきた、木への思いを忘れかけている。
私は何百年もたった伽藍を見る時、その破風の木目が、今なお鮮やかに色づくその鼓動を感じることができる。
そして一生青春の詩のように、自分の可能性を信じ、使命を全うするようにと、語りかけてくる思いを受けとることができるのである。




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