建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



因 縁
正月にいつも仕事をお願いしている庭屋さんからいい話を聞いた。
木はぐんぐん伸びなければならない。
それを囲ってしまって伸びなくしたら、木は困ってしまう。だから伸びられないというのが「困」という字になったんだと言うのだ。
木でも人でも頭を押さえられて伸びを止められてしまうと、困ってしまいその苦しさを困苦というんだなあ。
なるほどとえらく納得して、後日ある酒の席で庭屋さんから仕入れた、その教養をお披露目した。
ところがその席に、えらくほんとうの教養のある人がいて、それなら人を囲いに入れたら囚人の「囚」の字になるね、と教えられた。そして大という字は、人間が手と足を広げて大きくなるという字だ。その大を囲いに入れて、その囲いの中で大きくなっていられる環境、そういう因縁によって人が生かされている、それが「因」という字だというのだ。そしてだれのおかげで自分が大きくなっていられるだろう、という感謝の思い、それが「恩」なのだと。
漢字ってすごいなあ、哲学そのものなんだなあと、この歳になって納得した。




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