建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



花の育て方
私事で恐縮だが、爺さんは三十六、父は四十七、その弟は五十二、その長男は四十五歳でみんな逝った。とにかく男が早死にする。
そんな血筋なので、私もそう長く生きられないだろうと思って生きてきた。
父との思い出は四歳の時だったからまったく無いが、大人になるまで心にひっかかってきたことがある。
それは成長する時、父親への反発とか、父との競争心とかが、男には必要だと言われたことだ。
母子家庭であることで就職にも影響した時代、大人から聞かされたそんな言葉が胸につかえていたのだった。
母にはわがままをいいながらでも、それでいてそむけない強さがあった。
いい加減さは許されず、母のその強さは父親のいないことへのハンディを乗りこえさせようという誇りであったように思う。
そんな辛抱のある強さが、父親には是非とも必要なのだろう。
現代は、家庭でも職場でも、その強さが無くなった。
ほしいものがすぐ手に入る時代、花がほしいと言えばすぐに切り花をあたえてしまう。
せめて花がほしいと言えば、花の育て方を教えるそんな忍耐力のある父親であり、職場の上司であればと願いたい。




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