建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



不安願望

また年が行く
この歳になると、一日一日大切に生きなければならないなどという脅迫観念にとらわれる。

悪い癖で、若い頃から自分の中には、いつも不安分子があって、うまくいった時でも失敗した時のことを思い不安になったり、時間にだって遅れるといけないと心配し、それはそれは神経質な人間だった。

あるとき何かの本で、男子は安定した母親の胎内から出て誕生した瞬間から、不安を抱えて生きていく不安願望があるんだ。というのを読んでえらく納得したとたんに、自分の中に不安を抱えることで、神経が安定するという矛盾した本心に気づき、すっかり安定感を取り戻したりした。

人間は本当は自分が一番弱いと思っている部分が実は一番強くなったりして、歌うことがだめだった人が歌手で成功したとか、数学嫌いの人が数学者になったりする。

私なんか人前で話をすることが大の苦手だったのに、年50回以上も講演などで飛び回っているし、いまは人生に不安など無くなった。

しかし修行でそうなったのではなく、どうも本当は記憶力がすっかり悪くなって、きのう悩んだことを次の日にはもうすっかり忘れてしまっている、なんてことが多いだけなのだが、、。





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