建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



鬼門

北と東の中心から南と西の中心に向かって鬼門と呼ばれる方角がある。
住宅の設計をしていると、玄関やトイレがどうしても鬼門の方向にぶつかってしまい、これを動かすと家全体のデザインが崩れてしまって、悩みに悩んでしまうことがある。  

若い頃、どうしても方角を第一優先したいという建て主さんと一緒に、よく当たるという占い師の所へ連れていかれた。図面を見るなり、ここが悪い、ここも悪いと言い出した。見るからに貧相で、マイナス志向そうな雰囲気の占い師は、設計図を手直ししましょうと言い出した。ついには階段を中央にして田の字の家になり、南面の一番日当りのいいベランダの窓は、3尺以上腰壁を付けたほうがお金がたまると言うのだ。そんなに当たるものなら、少しはましな家に住んだらどうだろうと思いながら、気の進まない仕事となった。

昨年、東京である芸能人の家を建てた。設計が完成するころ、そこに台湾道教の風水の先生が登場したのだ。若いころの失敗を繰り返さまいと、風水に対する知識も十分だった私は、その持論をとうとうと述べた。  

本当の風水は大地にある気を探る中国四千年の学問なのだ。日本の風水では鬼門という方向だけを問題にするが、本当の風水の基本はあらゆる方向の「気」の動きを読むことから始まり、気の流れをつくり、運気を高めることに集中する。

東京の建築が完成するころ、道教の先生と意気投合した私に、免許皆伝のお墨付きを渡すということになったのである。素晴らしい気の流れの住宅が完成したことは言うまでもない。





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