建築家石出和博が心で見た日本の美しさを写真とエッセイでつづった日本のかたちとこころを癒す叙情詩・こころ紀行



和の意匠

人間の五感にかかわる記憶のうち、戦後の日本人が忘却してきたものは侘びの感覚ではなかろうか。

いま、プラスチックやビニールなどの新建材が暮らしの中を包み、素材感を無くした無機質な空間が氾濫しています。
自然や天然素材を生活の中に取り込む伝統技法は、経済主義に走った消費社会の中で捨てられているのです。
私たちが慣れ親しんだ環境は、実は人間の習慣的美意識を創り上げ、そこで培われた美意識は、その人の人生全体を支配するほど強い力を持っているのだと、欧米の建築学者たちは指摘しています。日本の懐かしい心象風景や日本人の持つ繊細な素材の表現、その感覚やこころがどこかに忘れられています。

床の間を飾る草花、土壁の風合い、障子の温かい光色。目に触れる全てがゆらぎ、記憶の中の五感に刺激を与えてくれる和の意匠。その場に身を置くことで、忘れかけていた心を取り戻すことができるとしたら、、、。
私は日本人の本来持っていた侘寂の空間を造ることで、美意識を取り戻し審美眼を高めることのできる本物の建築を創り続けたいと思うのです。





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